空き地にぽつりと咲くたんぽぽの唯一の友人・ミツバチ。たんぽぽが綿毛になるより先にミツバチは命を終え、そしてまた季節が廻り──。治療法のない病で長い入院生活を送る志信(しのぶ)。見舞いに訪れた従兄弟から太陽のような明るい雰囲気を纏う礼央(れお)という青年を紹介された瞬間、奇妙な感覚に襲われた。自分が『誰か』の病気を肩代わりしたために短命なのだと信じている志信は、回復を望まず静かに命を終えることを願っていた。だが礼央にまっすぐな好意を向けられ抗えず惹かれるうちに少しずつ健康を取り戻してゆく。やがて礼央が姿を見せなくなり……?
ルチル文庫