八ヶ月前に起きた銃撃事件。あの日、鳴り響いた銃声に、私は今も取りのこされている。犯人の少女──筑葉美琴と私が出会ったのは今から一年も前のことだった。彼女は旧校舎の女子便所にレジャーシートを敷いて昼ご飯を食べる変な女だった。その珍しさに惹かれて、私は彼女と連むようになった。そこそこに筑葉と親しくなったところで連休が入り、連休明けも私は彼女の元を訪れていた。筑葉は「買物をした」と意味深なことを言いながら拳銃を取りだす。筑葉は「これを持っていると安心する」と語ったけれど、私には到底理解できない感情だった。七月に予定されている学校祭を一緒に回ろうと筑葉と約束し、しばらく経ったある日のこと。いつもより少し遅い時間に旧校舎を訪れると、そこには先客がいた。先客は筑葉のことをイジメることを目的とした女たちで、私はどうすることもできずに隠れていることしかできなかった。ただあまりにも酷い光景に筑葉が拳銃を買った意味を理解した。そして訪れた学校祭当日、筑葉とふたりで女子トイレに篭もっていた。筑葉に小腹が空いたからなにか買ってきて欲しいと頼まれ、学校祭の中へと乗りこんで行く。そんな折、旧校舎のほうから『銃声』が聞こえたような気がした。私は慌てて旧校舎へと戻るが、すでにいじめっ子たちは筑葉に撃たれた後だった。私はたまらず、残りのひとりを庇ってしまう。これ以上、筑葉に罪を重ねて欲しくはなかったから。だけど筑葉は「私のことは庇わなかったのに、こいつのことは庇うんだ」と言って、いじめっ子のことを撃った。私は筑葉のことを守れなかった自分が不甲斐なくて、筑葉に私のことも撃つように頼むが、筑葉は拳銃を置いて、その場から立ち去ってしまう。私は拳銃で自分を罰そうとするが、どうすることもできず。ただあの日の銃声と筑葉のことを思うことしかできないでいた。▽受賞作品はpixivからもお読みいただけます『あの日の銃声が今もなお』
百合文芸小説コンテスト