物心ついた頃には大店の下働きだった椛。これから起こる凶事を黒い靄として視て、しかしそれをうまく人に伝える術を持たぬせいでいつしかいないもののように扱われていた。そんなあるとき華族の九条千景様が痩せっぽちな椛を引き取りたいと仰る。差し出された手の温かさに戸惑いつつ、千景様のお役に立てる日を胸に椛は美しく健やかに育ち……?
ルチル文庫